『タイプライター』のサンドボックスII

 案外、早い再会でしたね。いえ、私たちヤルトーノイに準ずる全ての生命は、寿命に依存して時間の流れを他の国の方と共有できなくなることが多々ありますので、お久しぶりであるのかもしれません。

 改めて、ツァグ・レ・ヤルクァルドラ・ミルと申します。普段は『タイプライター』として『編纂者』の手記の草稿を完成稿にする作業に従事しています。
 キゾシュイェグツウィ先生が私に用意してくださった「サンドボックス」ですが、やはり何もない状態から読めるものを作り出すことは私にとって難しいことであるため、今回は皆様のお便りにお答えすることにしました。

『キゾシュイェグツウィ先生の執筆風景を教えてください』
 先生が執筆部屋にいらっしゃること自体珍しいのではないでしょうか。大体の場合、どこかへ出掛けていますので。私がこの文章を打ち込んでいる今も、先生はどこか別の国に滞在しているようです。そろそろトスルークェノ様から先生の回収指示が私に回って来るかと思います。

『使っているタイプライターの型番は何ですか?』
 ……私のタイプライターのことでしょうか。ライトクラフトマンズ社の「TPWー1413E」ですが、なぜ私の仕事道具に興味があるのでしょう。メンテナンスができる拠点が少ないので、そこだけお気を付けください。

『最近あった、印象に残った出来事は?』
 仕事部屋で先生が転んで、『編纂者』の手記の草稿が床一面に四散したことです。危うく草稿を紛失するところでしたし、トスルークェノ様はキゾシュイェグツウィ先生を絞っていました。「見た目と執筆能力しかないのにその半分を不注意で失いかけるとは笑いものだな」……だそうです。
 その後お二人は殴り合いの喧嘩になりました。

『キゾシュイェグツウィ先生とツァグさんの好きな食べ物は何ですか?』
 先生は比較的濃い味付けを好みます。特にステーキなどの肉料理には目がありません。蜂蜜やジャムを使った甘いお菓子もよく買っているのを見ます。
 私は辛い味であれば構いません。

『トスルークェノは何者なんですか』
 ……トスルークェノ様、ですか。
 外からの印象は完全に敏腕営業マンです。お二人とも決して認めないでしょうが、長い付き合いでもあります。
 ……申し訳ありません。これ以上私からは、何も。お二人に関わることですので、深い言及は避けさせてください。
 ただ、お話できることがあるとすれば一つ。
 先週、トスルークェノ様のコーヒーに先生が塩をわざと入れて喧嘩になっていました。

     *

 あのときのあなたのリアクション、傑作でしたね。 キゾシュイェグツウィ

 お前の転び方の方が芸術的だったがな。 トスルークェノ

 白黒つけましょう、表に出てください。 キゾシュイェグツウィ

 お前が黒だ。 トスルークェノ

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