隔絶された理想世界 世界でいちばん静かな殺害

読了推奨:Ephemeral ChapterⅦ ノヴィリム、Interlude of Waistproge 北部大陸間横断鉄道調印式(アップロード前のためこのままお楽しみください)

 家の裏庭で火を起こした。冬の終わりの昼間のことだった。

 この氷雪に閉ざされた国では貴重な燃料。それを惜しむ気はなかった。とはいえそこまで大きな火が必要だった訳ではない。大して使いもしないライターが鳴った後、予定通りに火は燃え上がっていった。

 今になって、手にしたノートを少しだけ重く感じる。高級な紙が使われているから、少しの風が吹くだけで、解けるように滑らかにページが捲れていく。

『あなたは決してこのような犠牲を払うべきではなかった。そうでしょう?』

 美しいけれど、感情任せに乱れた筆致。その一つが目に焼き付いた。

 けれど手を離す。ノートは重力に逆らうことなく、ただ火の中へ落ちる。

 ノートに字を紡いだペン。いくつかの書類。

 順を追って放り込めば、どれも呆気なく灰と化していく。

 風に揺れる火を映す男の双眸は、どこまでも冷え切っていた。

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