親愛なる友人、トスルークェノへ
「世界はまるで不可逆な砂時計のようだ」
以前あなたが口にしたこの言葉を、時折思い出すのです。あなたらしくなかったな、と。
ただの流砂でもよかったでしょう。そもそも世界には他にも多くのものが存在するでしょう。
いえ。違和感の本質はもっと別のところにあります。
トスルークェノ。あなたはそんなノスタルジーな喩えを持ち出さないでしょう。
そうして、言いようのない感覚との同居が始まったのです。気分はもちろん良くはありませんが、これを手放すのもいけない。昔の思い出に囚われた、倦怠期の恋人達はこのような状態なのでしょうか? 悪い冗談? 私は至って真面目に記しているつもりですが。
まあいいでしょう。細部に不必要な拘りを持って本来の目的から逸れるのもよくありません。
とにかく。私がこの『編纂者』の手記を制作しようと思い立った理由は、トスルークェノ。あなたのあの言葉だったのです。
到達点は分かりません、完成も知り得ません。それでいいのです。そこに私の願いはないのですから。
トスルークェノ。あなたに贈るべき言葉は、そう。ただ一文で良いでしょう。
あなたが他の何者でもなくなったとしても、この大地を歩いていけるように。
キゾシュイェグツウィ・リ・アクィレミュ・ラフタ