『編纂者』の手記 序章

観測点

 かつて我々は星と星とを自由に泳ぐ風だった。
 世界は広い輝きの分布であったが、その全てが我々と共に在るように見えた。

 やがて翼は落とされる。それは過失か、原罪か。
 掌に載っているかのように見えていた星を、いつしか振り仰ぐことしかできない地表が、我々の滞在拠点と化してしまった。

 陸を駆り、海を渡る。
 人々により費やされた年月は、技術になり未来への展望となった。只人にとっては遠い時間を、今も私はこの大地で眺め続けている。

 されど未だ空は遠く、遍く星に至る試しはない。

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